概要

注文住宅には、建売住宅やマンションにはない資金繰りの問題があります。住宅ローンは原則として建物の完成・引き渡し後に実行されますが、注文住宅では完成前に以下の支払いが発生します。

  • 土地の購入代金 — 土地の引き渡し時
  • 着工金 — 工事開始時。建築費の約30%が目安
  • 中間金(上棟金) — 上棟時。建築費の約30%が目安

これらを自己資金だけで賄えない場合に利用する手段が、つなぎ融資分割融資土地先行融資の3つです。名称が似ていますが、それぞれ仕組みが異なります。

3つの違いの早見表

つなぎ融資分割融資(分割実行)土地先行融資
仕組み住宅ローンとは別の短期ローン1本の住宅ローンを複数回に分けて実行2本の住宅ローン(土地用 + 建物用)
金利高い(2〜4%程度)住宅ローン金利と同水準住宅ローン金利と同水準
契約本数つなぎ融資 + 住宅ローンの2種類1本2本
諸費用つなぎ融資分 + 住宅ローン分原則1回分2回分(契約ごとに発生)
取扱金融機関多い少ない少ない

つなぎ融資

仕組み

つなぎ融資は、住宅ローンの実行までの「つなぎ」として、一時的に資金を借りる仕組みです。つなぎ融資で資金を借りる → 引き渡し時に実行される住宅ローンでつなぎ融資を一括返済する、という流れです。

土地購入 → つなぎ融資①実行(土地代金支払い)
着工   → つなぎ融資②実行(着工金支払い)
上棟   → つなぎ融資③実行(中間金支払い)
完成   → 住宅ローン実行 → つなぎ融資①②③を一括返済

特徴

項目内容
金利住宅ローンより高い(約1.5〜4%程度が一般的)※3
返済方法住宅ローン実行時に一括返済。つなぎ期間中は利息のみ支払うケースが多い
担保不要な場合が多い(住宅ローンの事前審査承認が前提)
事務手数料10〜20万円程度
住宅ローンの返済期間建物完成後の住宅ローン実行時から起算

コストの計算例

土地代金2,000万円をつなぎ融資で6ヶ月間借りた場合(金利3%):

利息 = 2,000万円 × 3% × 6/12 = 30万円
事務手数料 = 約11万円(税込)
合計コスト = 約41万円

さらに着工金・中間金のつなぎ融資を加えると、つなぎ融資全体のコストは数十万円規模になることが一般的です。

向いているケース

  • フラット35を利用する場合(分割融資・土地先行融資に対応していないため)
  • 建築中の返済負担を避けたい場合
  • 住宅ローンの返済期間を建物完成後からフルに使いたい場合

分割融資(分割実行)

仕組み

分割融資は、1本の住宅ローン契約の融資実行を複数回に分ける仕組みです※1。契約自体は1回で、資金の受け取りを土地購入時・着工時・完成時などに分けます。

住宅ローン契約(1本)
  → 1回目実行(土地代金分)
  → 2回目実行(着工金分)
  → 3回目実行(残金分)

特徴

項目内容
金利住宅ローンと同じ金利が適用される
契約1本。契約に関する諸費用は原則1回分
返済方法金融機関による(後述)
担保土地に抵当権を設定する
取扱金融機関一部の都市銀行・地方銀行。ネット銀行は非対応が多い

返済開始のタイミング(金融機関により異なる)

分割融資の返済開始タイミングは金融機関によって異なります。大きく2つのパターンがあります。

  • 据置型: 建物完成前は融資済みの金額に対する利息のみを支払い、最終融資実行後に元金+利息の本返済が始まる
  • 即時返済型: 各回の融資実行の翌月から、その融資分に対する元金+利息の返済が始まる

いずれの場合も、返済期間の起算点を必ず確認してください。初回融資実行時から起算される場合、35年ローン(=420ヶ月)で土地決済から建物完成まで12ヶ月かかると、本返済に使える期間は420ヶ月 − 12ヶ月 = 408ヶ月となり、毎月の返済額が当初の想定よりも高くなります。

向いているケース

  • つなぎ融資の高い金利を避けたい場合
  • 対応する金融機関で住宅ローンを組める場合
  • 契約手続きの手間を減らしたい場合(契約1回で済む)

土地先行融資

仕組み

土地先行融資は、土地用と建物用で2本の住宅ローン契約を結ぶ仕組みです※2。まず土地購入時に土地分のローンを実行し、建物完成時に建物分のローンを実行します。

住宅ローン契約①(土地用)→ 土地購入時に実行
住宅ローン契約②(建物用)→ 建物完成時に実行

特徴

項目内容
金利住宅ローンと同じ金利が適用される
契約2本。それぞれに諸費用(手数料・登記費用など)が発生
返済方法土地分のローンは融資実行後から返済開始。建物完成前は利息のみの場合もある
担保1本目で土地に抵当権を設定。2本目で建物にも設定
取扱金融機関一部の銀行。三井住友銀行、みずほ銀行など

注意点

  • 諸費用が2回分かかる: 事務手数料、印紙税、抵当権設定の登記費用などが契約ごとに発生します。定率型手数料(融資額 × 2.2%)の場合、合計額は分割融資と大差ありませんが、定額型の場合は2倍になります
  • 土地分のローン返済が先に始まる: 建物が完成する前から土地分のローン返済が始まるため、賃貸住まいの場合は家賃との二重払いになる期間があります ただし銀行によっては支払い猶予期間が設定され、建物分の最終融資実行まで利息分の支払いのみで可とされる場合もあります

向いているケース

  • 分割融資に対応していないが土地先行融資は扱っている銀行を利用する場合
  • 土地と建物で異なる条件のローンを組みたい場合

3つの選択肢の比較

つなぎ融資分割融資土地先行融資
金利コスト高い低い低い
諸費用つなぎ分が追加少ない(1契約分)多い(2契約分)
手続きの手間2種類の契約少ない(1契約)2契約
住宅ローンの返済期間完成後からフルに使える起算点は要確認土地分は先に起算
取扱金融機関の多さ多い少ない少ない

注意点

利用する金融機関に事前確認すること

どの仕組みを利用するにしても、以下を契約前に必ず確認してください。

  • 返済期間の起算点: いつから35年(または選択した期間)のカウントが始まるか
  • 建築中の返済内容: 利息のみか、元金+利息か
  • 事務手数料・登記費用の回数: 融資実行回数ごとに発生するか
  • 金利の適用時期: 各回の融資実行時の金利か、初回の金利が全体に適用されるか
  • 対応している融資方法: 分割融資・土地先行融資に対応していない金融機関も多い

本審査には工事請負契約書が必要

いずれの融資形態でも、住宅ローンの契約には建築会社との工事請負契約書が必要です。土地の売買契約では、通常「土地決済後1ヶ月以内」など融資実行の期限が設定されるため、それまでに建築会社との間取りの確定・契約を完了させる必要があります。

つまり、土地探しと建築会社選びを並行して進めておかないと、土地の契約後に間取り検討の時間が足りなくなるリスクがあります。建築会社によっては、融資審査用に仮の間取りプランで契約し、後から詳細を詰める対応をしてくれる場合もあります。融資時のオペレーションについて、建築会社と金融機関の双方に事前確認しておきましょう。

工期の延長リスク

工事の遅延によりつなぎ融資の期間が延びると利息負担が増加し、分割融資では返済期間がさらに圧縮される可能性があります。天候不順や資材不足で工期が延びるケースは珍しくないため、余裕を持った資金計画が必要です。

建築会社の支払い条件を確認する

着工金・中間金の割合や支払いタイミングは建築会社によって異なります。「着工時30%・上棟時30%・完成時40%」が一般的ですが、会社によっては「契約時10%・着工時30%・上棟時30%・完成時30%」など細かく分かれることもあります。

建築会社を決める前に、支払い条件を確認し、融資の計画に反映させましょう。

出典

  1. みずほ銀行「注文住宅ならみずほ銀行の分割融資がおすすめ」— 分割融資の定義、つなぎ融資との違い https://www.mizuhobank.co.jp/loan_housing/lineup/bunkatsu_jikkou/index.html
  2. みずほ銀行「土地先行融資とは?つなぎ融資や分割融資との違い・利用の流れ、注意点」https://www.mizuhobank.co.jp/loan_housing/faq/loanguide/tips/article37/index.html
  3. みずほ銀行「つなぎ融資とは?知っておきたい基礎知識と利用の流れ、注意点」— つなぎ融資の一般的な金利帯の参考 https://www.mizuhobank.co.jp/loan_housing/faq/loanguide/tips/article12/index.html