概要

施主検査(竣工検査・内覧会とも呼ばれます)は、建物の引き渡し前に施主自身が建物を確認する機会です。傷、汚れ、建具の不具合、設備の動作不良などを確認し、問題があれば引き渡し前に補修してもらいます。

この記事では、施主検査のタイミング準備するものチェックリスト不具合を見つけたときの対応を解説します。着工から完成までの流れの最終段階に位置するステップです。

施主検査とは

位置づけ

施主検査は、建築会社の社内検査と指定確認検査機関による完了検査※1が終わった後、引き渡しの前に行われます。

検査実施者法的義務
社内検査建築会社なし(社内品質管理)
完了検査指定確認検査機関あり(建築基準法第7条)
施主検査施主(あなた)なし(契約上の権利)

法的義務はありませんが、引き渡し後に発見した不具合は「引き渡し時に確認済み」とみなされる場合があるため、入念に確認することが重要です。

タイミング

引き渡し予定日の1〜2週間前に実施するのが一般的です。指摘事項の補修期間を確保するためです。

引き渡し当日に施主検査を兼ねるケースもありますが、時間が足りず十分な確認ができなかったり、不具合が見つかっても補修を待たずに引き渡しとなる恐れがあるため、別日に設定することをおすすめします。

準備するもの

持ち物用途
図面(平面図、電気図面)仕様との照合
仕様書・打ち合わせ記録決定事項の確認
マスキングテープ(養生テープ)不具合箇所に目印を貼る
スマートフォン(カメラ)写真撮影・記録
メジャー(スケール)寸法の確認
懐中電灯暗い場所(床下、収納内部)の確認
スリッパ室内を歩き回るため
筆記用具・チェックシート指摘事項の記録
水平器(スマホアプリでも可)床や壁の傾きの確認

チェックリスト

外観

チェック項目確認内容
外壁ひび割れ、汚れ、色ムラ、目地の充填漏れ
屋根瓦のずれ、板金の浮き(目視できる範囲)
基礎大きなひび割れ(ヘアークラック程度は許容範囲)※2
雨樋固定のぐらつき、接続部の隙間
バルコニー防水の仕上がり、手すりのぐらつき、排水口の位置
軒天汚れ、シミ、ビス打ちの状態

内装(各部屋共通)

チェック項目確認内容
壁紙(クロス)剥がれ、浮き、シワ、継ぎ目の隙間、汚れ
天井汚れ、継ぎ目の状態
傷、汚れ、きしみ、沈み、フローリングの浮き
巾木・廻り縁隙間、ずれ、汚れ
壁・床の傾き水平器で確認。6/1000(1mあたり6mm)以上の傾きは指摘対象※3

建具(ドア・窓・収納)

チェック項目確認内容
ドアの開閉スムーズに開閉するか、自然に開いたり閉まったりしないか
ドアの傷表面の傷、へこみ
ドアノブ・レバーぐらつき、施錠の動作確認
窓の開閉スムーズに動くか、ロックが確実にかかるか
窓の気密サッシとの隙間、パッキンの状態
網戸破れ、レールからの外れ
収納の扉・棚開閉の動作、棚板のぐらつき、ダボの位置
クローゼットの扉折れ戸・引き戸の動作確認

設備(キッチン・浴室・トイレ・洗面)

チェック項目確認内容
水栓の動作お湯・水が出るか、水漏れがないか
排水水を流して排水がスムーズか、排水トラップの異臭がないか
トイレフラッシュの動作、温水洗浄便座の動作
キッチンコンロの点火、レンジフードの動作、食洗機の動作
浴室シャワーの水圧、浴室乾燥機の動作、排水口
給湯器お湯が適切な温度で出るか

キッチンや浴室の設備選びについてはキッチンの種類と設備浴室・洗面・ランドリーをご覧ください。

電気

チェック項目確認内容
コンセント全箇所で通電しているか(スマホの充電器等で確認)
コンセントの位置図面通りの位置・高さか
照明全箇所で点灯するか、調光機能は正常か
スイッチ全箇所で動作するか、三路スイッチの連動
インターホン呼び出し・応答の動作確認
分電盤ブレーカーの表示が正しいか
換気扇全箇所で動作するか

電気設計で計画した内容と照合してください。

水回り共通

チェック項目確認内容
コーキング浴室、キッチン、洗面台まわりのコーキングに隙間がないか
水栓まわり水栓と壁・天板の接合部に隙間がないか
床下点検口開閉できるか、床下に水たまりやゴミがないか

よくある不具合

施主検査で見つかりやすい不具合は以下の通りです。

不具合発生しやすい箇所対応
傷・へこみフローリング、ドア、窓枠、カウンター補修または交換
汚れクロス、窓ガラス、サッシレールクリーニング
クロスの隙間・浮き壁紙の継ぎ目、天井と壁の取り合い張り直しまたは補修
建具の調整不良ドアの開閉、引き戸のレール蝶番やレールの調整
コーキングの隙間浴室、キッチン、サッシまわり再充填
ビス打ち忘れコンセントカバー、手すりビス留め

許容範囲の判断

すべての不具合を「完璧に直してほしい」と求めるのは現実的ではありません。以下を目安にしてください。

  • 構造や防水に関わるもの: 必ず是正を求める
  • 機能に関わるもの(建具の動作不良、設備の不具合): 必ず是正を求める
  • 美観に関わるもの(小さな傷、クロスの軽微な隙間): 程度に応じて判断。生活に支障がない軽微なものは許容する場合もある

指摘の記録方法

現場での記録

  1. 不具合箇所にマスキングテープを貼り、番号を記入する
  2. マスキングテープの番号に対応する写真を撮影する
  3. チェックシートに番号・場所・不具合の内容を記入する

指摘事項一覧表の作成

検査後、指摘事項を一覧表にまとめて建築会社に渡します。

No.場所内容写真対応状況
1リビング南壁クロスの継ぎ目に隙間あり写真01未対応
22階トイレドアの閉まりが悪い写真02未対応

この一覧表は施主と建築会社の双方が保管し、すべての項目が「対応完了」になってから引き渡しに進むことを確認してください。

補修完了の確認

再検査の実施

指摘事項の補修が完了したら、**再検査(手直し確認)**を行います。

  • 再検査のタイミング: 補修完了の連絡を受けてから3〜7日以内
  • 確認事項: 指摘した全項目が適切に補修されているか
  • 新たな不具合: 補修作業によって新たな傷や汚れが生じていないか

引き渡しの判断

すべての指摘事項が是正され、再検査で問題がないことを確認できたら引き渡しに進みます。未是正の項目がある場合は、引き渡し後の是正スケジュールを書面で合意しておくことが重要です。

引き渡し当日の詳しい流れは引き渡しの流れと届出をご覧ください。

第三者の同行を検討する

施主検査に不安がある場合は、第三者の専門家(ホームインスペクター)に同行を依頼する方法があります。費用は5〜12万円程度です※4。施工中のチェックポイントで解説した第三者検査機関と同じ業者に依頼できる場合が多いです。

専門家が同行するメリットは、素人では見落としがちな不具合を発見できることに加え、建築会社との交渉の場面で専門的な根拠に基づいた指摘ができることです。

出典

  1. 建築基準法 第7条(建築物に関する完了検査) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
  2. 日本コンクリート工学会「コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針」— ヘアークラック(幅0.2mm以下)は構造上問題にならないのが一般的 https://www.jci-net.or.jp/
  3. 住宅紛争処理技術関連資料集「住宅品質確保法に基づく住宅の性能表示制度」— 床の傾斜の測定方法と不具合の判定基準 https://www.chord.or.jp/
  4. NPO法人 日本ホームインスペクターズ協会(JSHI)— ホームインスペクション(住宅診断)の普及・資格認定を行う団体。竣工検査同行の費用は延床面積・構造により異なるが、目視調査で概ね5〜12万円程度が相場 https://www.jshi.org/